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1.貧しさと闘い続けた短すぎる生涯
2.「台東区立一葉記念館」
3.「たけくらべ」の舞台
 偽造防止や経済効果の為、20年ぶりに新札が発行されました。5千円札の顔として、「樋口一葉」が選ばれましたが、女性が肖像となるのは初めてのこと(明治の政府紙幣では神功皇后が使用されている)で、近年の女性の社会進出の進展を鑑みてのことだったようです。一葉といえば台東区ゆかりの有名人。そこで今回は、時の人「樋口一葉」の生涯と、作品に描かれた台東区の名所に迫ります。
 一葉の本名は「樋口奈津(なつ)」。その人生は苦労の連続といわれています。明治5年、父・則義、母・多喜の次女として、第2大区1小区幸橋御門内(現・東京都千代田区)に生まれました。11歳までは学校へ通い、主席で修了するほど頭のよい少女でしたが、母親の反対で進学を断念しました。14歳になると不憫に思った父親の計らいで、名門歌塾「萩の舎」へ入門しましたが、そこでも頭角を表し、歌人としても知られています。
 15歳の頃、長兄が死去、17歳の頃には父親が死去し、ここから彼女は生涯、窮乏の苦しみを背負っていくことになります。
 一葉は21、22歳の頃(明治26、27年)、吉原遊廓の近く下谷竜泉寺町(現・台東区竜泉)に移り住み、生活苦を打開するため、雑貨・駄菓子屋を営み始めます。ここでの商人としての生活は、約9ヶ月間という短い間でしたが、後世に残る代表作「たけくらべ」にこの時一葉が暮らし見た吉原の風景が生かされています。その後、本郷区丸山福山町(現・文京区西片)へ移り、本格的な作家生活が始まります。一葉は24年という短い生涯でしたが、ここで後世に残るほとんどの作品を発表しています。
 新紙幣発行を機に来館者数が上昇。「一葉記念館」は文学ファンでなくても、樋口奈津という一人の女性の生き方を知ることができる魅力ある記念館でございます。処女作「闇桜」原稿や添削の跡から一葉の苦悩が偲ばれます。「たけくらべ」草稿、小説の師弟関係であった半井桃水(なからい とうすい)、友人との手紙も展示してあり、一葉の生活、価値観などが想像できます。また一葉の達筆さに思わずうっとりしてしまいます。竜泉寺町で商売を営んだ時の「仕入れ帳」等重要な資料が多く展示してあります。妹である「くに」が一葉近辺資料等の流出を防ぎ大事にしてきたからこそ、数多くきれいな状態で残っているそうです。
 一葉記念館のそばにあるお菓子屋さんで5千円札をそのままデザインした「お札せんべい」を販売しているので、お土産にしてはいかがでしょうか。
入館料 一般130円/小学生50円/団体割引有り
休館日 月曜日
開館時間 9:00〜16:30
TEL 03-3873-0004
所在地 111-8621 東京都台東区西浅草3-25-16 台東区生涯学習センター3階
交通 地下鉄日比谷線「入谷駅」 徒歩8分
台東区循環バス「めぐりん」 生涯学習センター北 徒歩2分
一葉記念館は建物改築に伴い展示場を移転します。台東区生涯学習センター内3階展示ホールにて2月22日(火)から閲覧可能です。(上記会館データは移転先・生涯学習センターのものになっております)
一葉が描いた吉原という「まち」の情景と子供たちの情感溢れる成長過程
「たけくらべ」の舞台となる吉原で、登場人物の多くは横町で長屋住まいをしています。彼らは、独自の生活様式・文化(=吉原という特異な場所の中でのみ通じていた文化とも言える)のなか、それぞれが成長という過程において、自らの出自や生まれ持った運命に抵抗しながらもたくましく生き抜いてゆきます。
 この物語の中で、前半の要となる部分が8月20日に行われる、千束神社の夏祭りです。また、主人公・美登利が遊女への道を歩き始める場面では、鷲(大鳥)神社の酉の市が描かれています。
○大鳥神社
(所在地…111-0031 台東区千束3-18-7)
現在は鷲神社と表記。「おとりさま」として商売繁盛の御神徳で親しまれています。「酉の市」発祥の神社としても有名で、11月には現在も一・二・三の市が催され、多くの人がつめかけます。境内には、一葉の文学碑や正岡子規の句碑などが建立されています。
○千束稲荷神社
(所在地…110-0012 台東区竜泉2-19-3)
江戸時代・寛文年間に創設。浅草一円を千束郷と称していた頃、上下二社の稲荷社が作られました。千束稲荷神社はその下社で当時は“ちづかいなり”と称されました。明治5年の太政官令により、竜泉寺村(1650年頃起こり、以後町として発展)の氏神様として、地域住民を中心に信仰されてきました。
信号から奥の道を進んでいくと、大門跡。交差点左手のガソリンスタンド前に見返り柳がある。
 吉原遊郭は「たけくらべ」の舞台となっています。一葉21、2歳の頃、吉原遊郭の近く、現在の茶屋町通りで雑貨・駄菓子屋を営んでいました。つまり、一葉は妓楼のざわめきと共に生活していたのです。たけくらべの主人公・美登利が一葉の分身とも言われているのは、その為ではないでしょうか。
 現在、吉原はソープランド街として知られおり、呼び込みボーイの姿が目立ちます。吉原は昭和33年「売春防止法」制定により300年の幕を閉じましたが、ホテル・旅館、情報喫茶、飲食店など、昔のままの風貌と歴史を残しながらも、その姿を少しずつ変え、現在でも受け継がれているように感じます。その空間の中にはマンションや学校、郵便局などもあり、そこで暮らす人にとって日常生活が普通に行われているのです。街の中で目を閉じると、一葉の頃の生活風景と人々のざわめきが聞こえてくるように感じます。吉原遊郭周辺を歩いていて異質さと、時代の変化を痛感しました。
人は生まれ、永遠の眠りにつき、生活の形も変わっていきますが、確実にそこに生きた人々の魂は受け継がれ、「あかし」として残っていくのです。
写真協力:台東区立一葉記念館
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